シーン1 「目覚めない弟」
「おはよう、柊」 返事は返ってこない。 悠の弟である柊は七年前のある事故以来、昏睡状態のまま眠り続けている。 一卵双生児の二人は初対面の人間が見たら区別が付かないほどよく似ている。 違いと言ったら柊の右目には泣きぼくろがあるのと、わずかに鼻の形が異なるくらいだ。 しかし、今の柊は頬が痩せこけ、数年間切っていない髪の毛の所為で亡霊のような姿だ。
シーン2 「ノーマッドとの出会い」
[悠] 「此処は何処なんですか?」=切実な問い。 [???] 「此処は夢無き夢の世界。あるいは命と魂の世界。人は皆、ドリームレスワールドと呼ぶ」 [悠] 「ドリームレスワールド……」 [???] 「ようこそ、ドリームレスワールドへ」=渋い笑み/恭しく頭を下げる。 男なりの歓迎なのだろうと思った。それを喜んでいいのかは判断出来ず、黙ってしまう。
シーン3 「仮面の女」
[カナデ] 「敵を捕捉」=冷たく無機質な声/足を一歩踏み出す。 蛇に睨まれた蛙が動けず、一方的に食らわれる気持ちを理解出来た気がした。 逃げろと警告がなっている/しかし、指先までもが石になってしまったように動かない。 [カナデ] 「排除する」 数十メートルの間合いが一瞬でなくなり、二つの白刃が悠に迫った。