三話 嫉妬

 


 我ながら親父臭いとヤマトは思った。
夕食を済ませ、ひとっ風呂浴び、ビールで喉を潤す姿は実年齢より少し老けて見えた。
 ジャージ姿のヤマトはぼんやりしながら時折ビールをちびちびと飲んでいた。
一缶目を飲み終え、二缶目と適当に買ったつまみを開けようとした時だった、コンコンとドアを叩く音が室内に響いた。

 「チトセか?」

 めんどくさそうに立ち上がりロックを外してドアを開けた。
そこにはチトセではなく、カムイが立っていた。

 「どうかしました?」

 「一緒にどうだい?」

 にっこり笑いながらカムイは缶ビールを顔の高さまで掲げた。
ヤマトは躊躇いながらも頷き、自分が買ったビールとつまみを持って一階の食堂にカムイと共に降りていく。

 「後でチトセが来るみたいだから、それまで男同士で語り合おうか」

 缶ビールを開け乾杯をして二人共一口ビールを飲む。

 「ヤマト君はどんな仕事を?」

 「製造業。不況の中、業績を伸ばしている珍しい会社」

 「恋人は?」

 「……居ない」

 カムイは次々にヤマトに質問を投げかけ、ヤマトは淡々と答えていく。
カムイの酒のペースはかなり速い様で質問が十いく頃には既に二つ目を開けていた。
ヤマトはまだ半分も飲んでいない。心の中でカムイが悪酔いしないタイプである事をこっそり願いつつ、まだまだ来る質問に答えていく。
 元々話すのが得意でないヤマトにとって、カムイの様にどんどん喋ってくれるタイプはありがたかった。
適当に答えておけばそれだけでいいのだから楽な事この上ない。

 「ふむふむ、成程。思っていた以上に面白い人だね、ヤマトさんは」

 「それは褒め言葉と取っていいのか?」

 「勿論。ナガトの友人って聞いてどんな堅物かなと思っていたけど全然そんな事なかった」

 全然褒められた気がしなかった。
またナガトの友人と言う負荷価値付きで見られた。
ナガトと親しかった村人と聞いて、少しは期待していたのだがやはり一緒かと半ば予想していた展開にヤマトはため息を吐き、ビールを飲んだ。

 「俺からも質問いいか?」

 「どうぞ」

 「ナガトはどんな奴だった?」

 村を案内して貰っている時、度々村人に呼び止められその度にチトセがナガトの友人と説明してくれた。
決まって嫌なあの目を向けてくる村人が殆どだったが、中には不思議な事を言う村人がいた。
 『あの悪ガキナガトがあそこまで更正するとは思わなかったよ』と。
 ヤマトは正義感の強いナガトしか知らない。
ナガトの事をヤマト殆ど知らなかった。
趣味とか好き嫌いとかそういうモノではない。知り合う前のナガトを知らないのだ。
知っているのは天城村出身で中学卒業と同時に親の都合で東京に引っ越してきた事くらい。
 ヤマトは知りたかった。
ナガトの過去を。それを知れば分かる気がした。ナガトの正義の理由が。
 カムイは目を閉じで少し考え込んでからゆっくり口を開いた。

 「あいつは村でも屈指の悪ガキだった。毎日悪戯しては先生や親に叱られて。
でも本人は全く反省しない。俺も一緒に暴れたり怒られた事もあった」

 昔を思い出し、カムイは可笑しそうに笑った。
ナガトが悪戯をして怒られる様子が全く想像できないヤマト。
何所までいっても真面目で、悪戯とは無縁だと思い込んでいただけに驚きを隠せない。
カムイは気にする事無く話を進めていく。

 「一番酷かったのは小六から中一に掛けてだったかな。上級生にしょっちゅう喧嘩売られて、ナガトはそれを買って。
流血沙汰は当たり前。救急車や警察が来た事も何回かあったかな。
他にも学校抜け出して怒られたり、万引きして親にぶん殴られたり、先生の自転車盗んで隣街まで行ったり、もう数えきれないくらいの伝説を残したね。
村の人でナガトを知らない人は多分いないよ。良い意味でも悪い意味でも」

 話を聞く限りではヤマトが知っているナガトの姿は見当たらない。
その逆しかない。
益々分らなくなる。一体何がナガトを変えたのか。

 「何がナガトを変えたのか、それが知りたいって顔してるね。でもそれは出来れば俺じゃなくて、本人から聞いてほしいな」

 「本人?」

 「ナガトを変えた本人。この村で農家をしている武田ケンシンって人」

 誰かが間違えて答案に書きそうな名前だとヤマトは思った。
武田ケンシン、彼がナガトを変えた人物らしい。

 「明日、ケンシンさんの所に行くといい。連絡は取っておくから」

 「……ありがとう」

 「いいって。それより、何でそんなにナガトの事を知りたいの?」

 ヤマトは口を閉ざした。
単純にナガトの正義のルーツを知りたいだけ、それだけなのに何故か口に出来なかった。
口に出来ない理由。それは他にも理由があるからだ。
 しかしそれを言っていいのか、ヤマトは迷っていた。
それを言えば自分の浅はかな部分を曝け出す事になる。
今まで楽な道ばかり選んできたヤマトにとってそれは厳しい選択だった。
 当のカムイはただじっとヤマトが口を開くのを待った。
焦らせるでもなく、怒るでもなく、ただじっと。
それは逆に無言の圧力となりヤマトはまるで誘導されるかの様に口を開いた。

 「俺は、あいつに嫉妬してるんだ」

 「嫉妬」

 疑問を投げかけたのではなく、肯定する様にカムイは嫉妬と言う言葉を繰り返した。

 「あいつと知り合ってからずっと、ナガトの友人と言う負荷価値付きで見られた。
別にナガトの知り合いだからって俺にはどうでもいい相手だったから気にしなかった。いや気にしないふりをしてたんだ」

 「羨ましかった」

 ヤマトの心を見透かすようにカムイは言った。
ヤマトは頷き、カムイが自分の心中を当てた事を特に驚きもしなかった。

 「ナガトに向けられる信頼、希望に満ちた目が羨ましかった。
楽な道ばかり選んで逃げてきた俺には到底向けられないそれがただただ羨ましかった。憎しみに近い嫉妬心を持った事もあったと思う」

 ナガトと言う人物は人々が完璧と理想する人物に限りなく近い人間だったとヤマトは思う。
苦しんでいる人がいれば助け、悪行を働いている奴がいれば現行犯で逮捕する事もあった。
だが、ただ優しくて正義感が強いだけではなった。
怠けて助けを乞うような人間には厳しい態度を見せたし、自分の正義を『死んでも』曲げようとしない頑固な一面も持ち合わせていた。
 彼に対する期待は半端なものではなく重圧も相当のものだった筈なのにナガトは全く苦にする事なく、期待に添えるだけの結果を残した。

 ナガトと特に親しかったヤマトには重圧の欠片が降り掛かっていた、負荷価値となって。

ナガトに期待を寄せる人間が勝手にヤマトにも期待に近い感情を寄せた。
期待するに値しない人間と分かると手の平を返して虐げる様な視線を浴びせるようになった。
勝手に期待して、勝手にがっかりする、ヤマトにしてみればいい迷惑だった。
 善人の知り合いが善人とは限らない。善人の知り合いが悪人と言う事もある。

 「ナガトが死んで、やっと嫉妬から解放されると思っていた。
でも、あいつがいなくなった後でも俺はナガトの友人としてしか見られない。負荷価値付きの粗悪品だ、俺は」

 「ナガトはいつから君にとって上の存在になったんだい?ナガトはヤマトさんを下に思った事なんてない筈だよ」

 最初、カムイの言っている意味が理解できなった。
数秒考えてヤマトはハッとなる。ヤマトは気付かない内に他人の価値観で自分とナガトの関係を築いていた。
 ヤマトにとってもナガトにとってもお互いは親友だった筈だ。
ナガトの友人と言う負荷価値は時間とともに嫉妬を生み、ヤマトの心に上下関係を構築していた。
 二人の関係に他人が介入していい筈がなかった。
ヤマトもそんな事望んでないし、ナガトもきっと望んでなどいなかった。

 「他人が何を思おうと、ナガトとの関係が崩れる事なんてないんだよ」

 カムイはナガトとの関係と言う部分を強調している様に思えた。
ヤマトは僅かだがそこに違和感を覚えた。
そこだけではない、カムイの言葉の端々に歯痒い様な違和感があった。

 「カムイさん」

 「何だい?」

 「貴方も同じ経験をした事があるんじゃ?」

 カムイは答えない。
無言が肯定であるとヤマトは察した。
自分以外にも負荷価値を付けられた人間が居た事に僅かだが安堵感を覚えたヤマトだったがそれと同時に嫌悪感も覚えた。
浅はかな人間に対して。
 ナガトに過度の期待を寄せる人間の大半はお世辞にも良い人間と言い難かった。
他力本願な人間が多かったし、ナガトの知り合いと言う『付加価値』を望む者もいた。
ナガトと親しいヤマトに嫉妬し、敵意を剥き出しにする人間もいた。
 しかし、そんな奴らでも、ナガトは分け隔てなく接した。
狡賢い奴から見ればナガトはいいカモだった。現代にはそういう人間が多すぎる様だ。
他人を想う人間が馬鹿をみて、他人を利用する人間が甘い蜜を吸う。
評価されるべき人間が評価されない時代。そんな中でもナガトは自分の正義を貫いていた。

 食堂のドアが音を立てて開いた。
ヤマトとカムイがそちらに視線を向けると笑顔のチトセが立っていた。
手には袋をぶら下げている。
 カムイはいらっしゃいと言いながら視線でヤマトに今の話は終わりと伝える。
それを察したヤマトは無言で頷き、温くなったビールを一口飲んだ。

 「ヤマトさん、来ちゃった」

 「チトセが居た方が華もあっていい」

 「同感だ」

 三人の笑い声が食堂内に響いた。
チトセはカムイの隣、ヤマトの前の席に腰を下ろすと持っていた袋から透明な包みに入ったクッキーを取り出して、テーブルの上に無造作に置かれたつまみの中に置いた。

 「私が作ったんだけど、口に合うか」

 自信なさげに言うチトセだったがカムイの笑顔からクッキーが美味しい事が伺える。
予想通りクッキーは市販されている物変わらない程美味しかった。ただビールとの相性はあまり良くなかったが。

「ヤマトさん、明日なんだけど……」

「明日がどうした?」

明日は御神木大祭の前日。巫女であるチトセは準備等で忙しい筈だ。

「明日はお祭りの準備で案内は出来そうにないの」

予想通りの答えが返ってきた事に特に表情を変えず、

「今日一日案内してくれただけで十分だ。明日は一人で色々回ってみる。それに……」

「それに?」

武田ケンシンに会ってくるとは流石に言えなかった。
なんとなく、その事はチトセに言わない方がいいと感じたからだ。
首を傾げたままのチトセだったがいつまでもその先を言わないヤマトを見て話したくない事と察したのかそれ以上聞こうとはせず、別の話題を振ってきた。

「ヤマトさんもお酒飲むんだね」

「ん? まぁ、しょっちゅう飲むわけじゃないけどな」

 「チトセも一杯やるか?」

 カムイが開いていない缶ビールを一本チトセの前に置いた。勿論、未成年のチトセは断ったがカムイは、

 「歳なんか気にすんな。俺なんか十八から毎日飲んでたぜ」

 自慢げにカムイは言ったが未成年の飲酒は犯罪だ。
しかも、カムイは悪酔いした様に大げさな手振りをし始めた。ヤマトは直ぐに理解した。演技だと。
 チトセが来てからまだ一本も飲んでいないし、さっきは全然酔っていなかった筈だ。
悪酔いして絡む奴も性質が悪いが、酔っているふりをして絡む奴も相当性質が悪い。
絡まれているチトセはその事を知らないようで、少し焦っているようだ。
 止めようか迷ったが、面白そうな事になりそうなのでヤマトは黙っておいた。

 「お固い事言うなよ。明後日は祭りだぜ?景気良くいこうぜ、チトセ」

 「だからって飲酒が許されるわけないでしょ。それにうちの親、二人ともお酒弱いもん」

 だからきっと私も弱いわ、とチトセは付け足して缶ビールをカムイに突き返し、代わりにクッキーを手にとって口に運んだ。

 「そのうち酒の美味さが分かるようになるって」

 喉を鳴らして笑うカムイはチトセが突き返したビールを開け、一気に半分飲んで笑顔でアルコールを含んだ息を吐いた。
ヤマトはと言うとつまらない結果に終わった二人の会話を傍観し、ちびちびとビールを飲んではおつまみを食べていた。濃い味のおつまみはビールと良く合う。

「ヤマトさんはこんなお酒飲みになっちゃ駄目だよ?」

母親みたいな事を言うチトセにヤマトは苦笑を漏らしながら無言で頷いた。


 夜は更け、日付が変わろうとしていた。
三人の姿はまだ食堂にあったがチトセは机に伏して微かな寝息を立てていた。
ヤマトを案内した事で疲れが溜まって居たのだろう、カムイが肩を揺らしても起きる気配はなかった。
苦笑を漏らしながらチトセを背中に背負い、ヤマトの方を見た。

 「チトセを家まで送ってくる。片付けはしておくから」

 「いいのか?」

 「お客さんに片付けさせるわけにはいかないよ。明日は七時くらいに朝ご飯を準備しておくから。それじゃお休み」

 そう言い残し、カムイはチトセを背負って食堂を出て行った。
ヤマトは少し迷ったがそのまま部屋に戻ることにした。
部屋に戻り鍵を閉めて電気を付け、敷いてあった布団に顔からダイブした。
ふかふかの布団は干してあったのだろう、太陽の匂いがして眠気を誘う。
 そのまま寝ても良かったが口の中に残ったおつまみのカスが気になり、バックから歯ブラシを出して洗面所に向かう。
先端に歯磨き粉を付け、歯を磨く。使い慣れた毛先の感じと歯磨き粉の刺激が知らない土地で一夜を過ごす不安を少し和らげる。
幾度となく知らない土地で寝泊まりしているがどうしたものか、毎回上手く寝付けず布団に入って一、二時間は寝返りを打ったりする。
それはおそらくナガトの故郷である此処でも変わり無いだろう。
 歯磨きを終え、洗面所から出てもう一度布団に顔からダイブした。
 今日一日の出来事を思い返す。
天城村を訪れ、偶然ヤマトの幼馴染のチトセに出会い、カムイを紹介され、チトセに村の案内をされ、村人には負荷価値付きの視線を向けられる。
明日はカムイの計らいで武田ケンシンに会うことになった。
悪ガキと悪名高かったナガトを正義感の強い頑固者に変えた男。
 ヤマトは考える。
ケンシンに会えばナガトの正義のルーツが分かるのだろうか?
自分は下らない嫉妬と胸糞悪いあの目から解放されるのか。
解放された自分はどうするのだろうか。
考えても答えは中々見つからない。
結果が見えない事にヤマトは僅かに苛立ちを覚える。
知る事が目的ではない。
いや、此処に来てチトセと出会い、カムイと話をするまでは知る事が目的だった。
ヤマトは変わりたいといつの間にか願っていた。
ナガトの友人なんて負荷価値の付いた人間ではなく羽柴ヤマトと言う個人として見てほしいと。
それにはナガトの正義のルーツを知るだけでは駄目だ。
知り、理解し、受け入れる事でヤマトは変わる術を手に入れる。そして自らの意思で変わらないといけない。
ナガトの正義のルーツを知る事は過程でしかない。
その先にある、変わると言う目的を達成し、結果を見据えければ意味が無い。
ヤマトはいつまで経っても負荷価値の付いた粗悪品でしかないのだ。
思考が何重にも重なり合い、ヤマトは頭を抱える。
普段深く考える事をしないヤマトにとって、この程度の事でも脳細胞を使うと頭が痛くなる。
考える事を放棄したかったが変わりたいと願う心がそれを捨て去る。
答えが纏まるより先にヤマトは睡魔に屈し、深い眠りに誘われていた。


 夢を見た―――不思議な夢だった。
真っ暗な空間に一人で立っている夢。
声も出せない、足も手も動かない。
動くのは首から上だけ。
頭を可能な限り動かし、辺りを観察したが見えるのは暗闇ばかりで他には何も見えない。
訳の分からない夢に戸惑いを覚える。
時間だけがやたら長く感じた。これならまだ落下したり追われる夢の方がマシだと思った。
その時、変化が起こった。
遠くの方で何かが光り、それが近付いてきたのだ。
それも一つではない。
何十、何百、何千、何万以上にも及ぶ光が周りを覆いつくした。
光は生き物様に不規則に動き、前も後ろも視界の外も覆いつくしていた。
光の一つが、肩に止まった。
恐怖も戸惑いも驚きもない。
あったのは懐かしい暖かさだった。
光を観察すると瞬きの様に強く光ったり弱くなったりしている事に気づいた。
しかしそれがなんなのかは分からなかった。
生物である事は確かだったがそれしか分からなかった。
光は徐々に数を減らしていき、最後の一つが消えた時、失っていた意識が覚醒し暗闇の世界から解き放たれた。
あれほど鮮明に覚えていた筈なのに、目が覚めた時には全て、忘れていた。

 携帯の目覚ましの音で目を覚ます。
覚醒しきらない意識の中、手探りに携帯を探し、五月蠅い目覚ましを止めた。
目を開き、携帯を見ると時刻は六時五十分。
 どうしてこんなに早く目覚ましを掛けているのか不思議に思い、体を起こすといつもと違う部屋の景色に僅かに戸惑う。
未覚醒の意識でぼんやり考えていると、ふと自分が今何所にいるのか思い出した。
昨日、亡き友の故郷である天城村を訪れ、村の中にある民宿に泊まった事を思い出した。
目覚ましは寝る前にセットした事を思い出し、七時から朝食だった事も同時に思い出す。
携帯を見ると六時五十三分を映し出していた。
 欠伸をしながら布団から出るとジャージを脱いでジーンズを履き、ワイシャツはまだ着ないでTシャツのまま部屋を出て食堂に向かった。
 そこには既にカムイの姿と二人分の朝食が準備されていた。

 「やあ、おはよう」

 「おはよう」

 挨拶を交わし、ヤマトは席に座り、カムイは味噌汁とご飯を二人分よそって食卓に置いた。
メニューは和食。ご飯にわかめの味噌汁、卵焼きに漬物と焼き鮭と定番。
普段トースト一枚で済ましているヤマトにとってはかなり多い量だったが食べ切れない量ではなかったので無理はしたが残さず完食した。

 「ケンシンさんには九時に神社前に来てもらうようになったからそれまでに神社の方に行ってほしい」

 「わかった。色々すまない」

 「気にしなくて大丈夫さ」

 ニッコリ笑って答えたカムイは二人分の食器を持って厨房の中に消えていった。
ヤマトも食堂を出て部屋に戻る。
 部屋に戻った時間まで本を読んだり、窓から外を眺めたりして適当に時間を潰す。
約束の三十分前に身支度を整え、少し緊張した面持ちで部屋を出て、ケンシンとの待ち合わせ場所に向かった。

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